地質学・地盤工学・水文地質学等をベースにした問題解決、自然地盤。人工地盤を問わず斜面災害予防、宅地・擁壁等の安全性評価・紛争解決です。
谷埋め盛土の地震時安定性評価
宅地目的等で造成された土地には、切土と盛土が存在します。一部の盛土は地震時に地すべりを起しますが、そのメカニズムを明らかにして、3次元的安定度評価法を構築しました。これで初めて斜面の安定度が予測する方法ができた。やっぱりそうだったか、という感じです。
この3次元的安定度評価法は、2006年の宅地耐震化事業を盛り込んだ宅地造成等規制法改正に寄与しました。また、2022年度に成立見込みの「盛土規制法」の技術基準(すべり面が液状化することを前提とした解析法)に採用される見込みです。
(参考)2022年4月6日国土交通委員会質疑参照 https://youtu.be/bFPXI-mZd-I
地すべりの3次元安定解析
境界面の形状・強度を個別に設定した3次元安定解析システムを構築したこともあります。これによって、地すべりの安定性評価を演繹的に取り扱う「順計算」で行えるようになりました。それまで地すべりは単一すべり面強度の2次元法で行うのが普通だったので「順計算」ができないので、工事量を決めるためだけの「逆計算」をしていました。
この手法で行う3次元安定解析は、ありのままの形状・強度で解析を行うので、順計算が可能となり、地形改変に伴う安定度の評価が的確に行えるようになりましたね。
土砂災害警戒区域の斜面安定化対策
崩壊の瞬間に発生する土中の過剰間隙水圧の斜面安定に対する影響を評価し、その水圧を消散させることで安定化対策をする方法を構築しました(特許取得済み)。崩れるか崩れないかを評価する方法です。土砂災害警戒区域の斜面の対策を求められることがあり、そのような斜面に対し安定化対策工事を合理的かつ経済的に実施できるようになりました。
こういったお仕事はとても安い仕事が多いです。しかし、安定度評価が外れた場合の損害賠償のリスクはすごく大きい。だから誰もやりたがらなかったんだと思います。
3次元落石シミュレーション
地形の制約を受けた場所で、 3次元経路解析と落石シミュレーションを組み合わせて、最も効果的な場所に対策工を設置できるシミュレーションを実施したことがあります。転石群が落ちた時の経路・跳躍高・エネルギー量を計算して、最も効果的な位置に対策工を設置する設計を行えるようになりました。
落石は角張った石が散らばる斜面を角張った石が落ちていくので、予測できない挙動を示す顕著な確率現象。これをどのように皆さんが納得するような話にしていくかが大変でしたが、3次元落石シミュレーションを用いることで、皆さん理解しやすくなったと思います。
宅地・擁壁の個人相談、紛争解決
高度経済成長期に宅地開発された擁壁や宅地が老朽化し、不安定化しているものが多いです。そこで、表面波探査等を用いることによって、経済的に危険度評価を行える方法を開発しました。宅地や擁壁の安定性は目視できない構造物の裏や地中の状態を知らなければ十分な評価ができないため、表面波探査等を用いた物理探査法を用いています。宅地問題は紛争に発展することが多いので、裁判事案にも対応しています。
宅地や擁壁の安定性について、人間の目で見て得られる情報は実は微少な程度でしかなく、きちんと見えない部分のデータも採取して評価しないとダメだと思っています。
防災資材・工法開発
変動原因を正確につかむことによって、その要因を除去すれば災害を予防することができます。資材メーカーと共同で新工法開発を行っていますが、排水補強パイプ(表層崩壊予防・滑動崩落予防・擁壁の転倒防止等)、メンテナンス不要の法面側溝蓋、長寿命水抜孔保孔管などが製品化されています(それぞれ特許取得済または申請中)。土がどうあがいても崩れないツボを抑える方法が作れたと思います。
3次元地盤可視化
地下の地盤の状態を可視化している技術です。汚染物質(土壌・地下水汚染)、地層(層序)、岩盤の固さ(文字情報の土軟硬区分を3次元展開する)など。3Dの地中可視化モデルの作成や、そのモデルのフルカラー3D模型を作成もしています。専門家でない人への説明に非常に役立ちました。
自らの技術力の説明あるいは証明をする手間が省けました。知名度がない時期に独立開業したものにとっては、けっこう大切な効果です。
技術士として自分が開発した調査・解析・設計法などが、新しい法律・制度の誕生や問題解決に寄与する喜びがありました。
技術士会に入会し活動することで、他分野で最高級の仕事をしてきた方々と意見交換ができ、良い刺激を受け、視野が広がったと思います。これは技術士資格取得で一番良いことでした。河野理事が誕生して以降に特に顕著になりました。