DSC_0012 ポリプロピレン（PP)繊維の製造、用途開拓及び問題点の解決、その他一般的プラスチック素材情報です。
広く使用されている石油製品の中で、汎用プラスチックとして最後に生まれたポリプロピレン(PP)は当初、用途が少なかった。私は、その特長を生かせる繊維形態の研究・商品開拓に従事してきましたが、今ではフィルムや雑貨用途も含めると、ポリプロピレン（PP)はポリエステル(PET)の次に多く使用される樹脂になりました。
トヨタのハイブリッドカーに使用された、ニッケル水素蓄電池セパレータ用ＰＰ繊維
ハイブリッドカーに必要とされるニッケル水素蓄電池の長寿命化の課題として、電極間に使用する不織布の絶縁能力の長期間安定性がありました。電池用のセパレータ用高性能ＰＰ繊維製造の工程に、水産用ロープ用ＰＰ原糸に使用している【高圧蒸気槽内】での延伸を行った抄紙用ＰＰ短繊維は、今までに無い高強度、高弾性率、高結晶化度、低伸度で、特殊な構造をしていた。この繊維の用途を探すため、関係会社に持ちあるく中に、次世代電池（ニッケル水素、リチューム電池）のセパレータを探していた会社“バイリーン”があったのです。現在、独占的特許として、トヨタのハイブリッドカーのニッケル水素蓄電池セパレータにはこの繊維が使用されています。やっとポリプロピレンが日の目を見たと思いました。
マスクなどのフィルター用PP繊維
コロナ流行で注目されたＰＰ不織布が空気が流れる隙間より細かいウイルスを除く事が出来るのは、ＰＰ繊維に与えた静電気の力によるからです。嵩高で感触のいい高級不織布は、短繊維ＰＰ系繊維を加工して作成します。そこ工程では静電気防止のため必ず界面活性剤が必要であり、再度静電気加工するには界面活性剤を洗浄することが必要でした。
そのため不織布作成の熱接着工程で親水基が潜り込む新規界面活性剤を油剤メーカー共同で開発しました。親水基が繊維表面に無いので洗浄する必要がなくなり、ＰＰ繊維のフィルター効果を上げるための静電気付与が簡単になりました。PP繊維による逆転の発想でした。
掛け布団用詰め綿(汎用プラスチックで最も軽い特長を生かす)
分子量の異なる2成分のPPを張り合わせて1本の繊維として、乾燥・熱処理による2成分の熱収縮差で捲縮（ジグザグ加工の一部）を起こさせました。更に嵩アップには、繊維を中空にすることが有効で、これによってボリュームは上がります。この掛け布団用詰め綿は、赤ちゃん用に重重要視されましたが、後に再生PETが多用されるようになってしまいました。
トヨタ系カーマット用PP原着綿の開発（内装材の見栄え、軽量化が目的）
カーマットは、直射日光が当たる箇所用については耐日光（紫外線）・耐高温性能アップが必要です。大衆車内装材のカーペット、レザーシートをカラーＰＰ繊維に代えるためには、促進試験方法、測定規格（光源、温度、時間）など、全てゼロから決める必要がありました。
結果として、当時のトヨタのベストセラー大衆車・カローラに採用され、内装は全て、ＰＰ繊維からなるシートが採用されました。私の実績の中でも大きな達成感を得た成果でした。しかしこれも、車用素材と、PET樹脂のリサイクル化が重要課題になった際、PETくず樹脂の政策価格により、次第にPET素材が使用されるようになりました。
衛生材料向けＰＰ系複合繊維（反応性、親水性が無い特長を生かす）
直接肌に触れる衛生材料にはポリオレフィンが最適です。おむつ、ナプキン等の表面材に適した構造と加工性に優れたＰＰ/ＰＥ（ポリエチレン）繊維を検討し、芯部ＰＰ/鞘部ＰＥの2重構造で、繊維製造及び不織布加工が簡単な偏芯構造（芯・鞘の中心が一致しない）の繊維を開発しました。低価格の大人用おむつには、ＰＰスパンボンド不織布が使用されていますが、高級な赤ちゃん用やナプキン等には、現在もＰＰ/ＰＥ複合繊維が使用されています。
技術士には２１の技術部門があるので、複数部門が集まる会合に参加するだけで、他部門の技術専門家との交流ができる。日本技術士会の会合に参加するだけで、他部門の技術専門家との交流ができるということです。