野村 幸弘 技術士(農業部門)


・得意とする分野は何ですか?
食品の開発、製造・加工及び流通時に起こる品質低下の現象の解決で、その対象は不快な臭の発生、物性の変化、変色などです。
・活躍したことをお聞かせください。
スナック製品の製造直後に発生した劣化臭の原因究明とその解決方法に関する技術指導
 スナック製品を製造販売している企業から製造直後に発生した劣化臭の解決について相談を受け協働で業務を実施しました。
 その結果、劣化臭の発生の原因は油脂の酸化劣化であり、その対象原料は先方が推定したものとは異なり全く想定していないサブの原料に起因していることを初めて明らかにし、更に、その防止方法を確立して解決しました。その際これまで蓄積している技術、知見、ノウハウや情報を活用することで課題を達成することができました。また、製品の賞味期間を現行よりも2ヶ月間延長することができ販売期間が延ばすことに貢献できました。 
大豆特有の青臭みが発生しない豆腐粉末の素の研究開発
 大豆の青臭みの主体はヘキサナールであり、それらが生成する原因は大豆中に含まれる酵素(リポキシゲナーゼ)が関与しています。青臭みの発生を防ぐには、製造工程中にその酵素の活性が保持されていても、酵素が働けないような環境にすることが必須です。試行錯誤を繰り返す中で大豆を低酸素下で磨砕するという画期的な製法に辿り着き、やっとのことで製造方法を確立し特許を取得しました。
 その結果、製品を室温に1ヶ年間保存しても青臭みか発生しない豆腐粉末が製造でき、同時に他の課題も解決し初期の品質目標を達成して製品が生産できました。そこで確立した「低酸素製法」の考え方や技術は、今日、ビールを初め、マヨネーズ、牛乳、コーヒーなど多くの食品に活用されています。
柿の葉すしにおいて発生した異臭の解決方法に関する技術相談
 某柿の葉すしメーカーではお客様から「異臭が発生する」というクレームが多く上がっていました。その課題を解決するために協働で業務を取組みました。
 その結果、原因として全く想像していないような現象を見つけ、安価な解決方法を確立し製造工程に組み込みました。その後、先方のメーカーから同上のクレームは1件も発生していない状況であると報告を受けています。また、某公設試で長年解決できなかった課題を解決することができ喜んでいただきました。
レトルト食品における粘性低下の原因究明とその防止対策
 レトルトカレーの工場テストのときに粘性が低下するという予期せぬ問題が発生し、その原因究明と防止方法について相談を受けました。
 対応した結果、配合している特定の原料に含まれる酵素(アミラーゼ)が粘性の低下に関与している事実を明らかにし、その防止対策として製品の品質特性にダメージを与えずに特定の原料を加熱処理して酵素を失活させることで問題を解決しました。お陰で製品の廃棄ロスの削減に貢献できました。
柿の葉すしを保存するときにご飯が硬くなる現象の改善に関する技術相談
 炊飯したご飯を室温で保管する場合に日にちが経過するにつれてご飯が硬くなります。その原因は炊飯したご飯中のでん粉が老化することに起因しています。
でん粉の老化防止には、一般的には食品添加物を利用して対応する方法が行われていますが、某柿の葉すしメーカーでは食品添加物を一斉使用せずにでん粉の老化を防止する解決方法に拘れました。課題の解決のためにメーカーと協働で対応を進めました。
 検討した結果、米の浸漬から加熱炊飯するまでの工程において、お米を物理的な方法で対処することで課題を解決することができました。更に、そのメーカーは確立した技術をもとに「ものづくり補助事業」に申請し採択され、補助金の獲得に寄与することができました。
各種セミナーや講習会での講師の経験
 これまでに修得して蓄積した技術・知見、ノウハウ及び経験を少しでも食品業界にお役に立てていきたいと考え、自分の専門分野(油脂の酸化劣化に関する内容及び製品の品質に影響を及ぼす酵素に関する内容)を中心にセミナーや講習会で講師を務めています。セミナーや講習会では、理論や技術だけでなく開発・現場での実例や裏話を講義の中におりまぜて説明するように工夫し、受講者から講義内容に斬新さがあるとコメントをいただきました。
・技術士を取得して良かったことは?
 技術士会が主催している会合(各部会や研究会など)に参加することで、自分の専門分野の深堀や関連情報が得られます。また、技術レベルの高い他の技術士と交流することで自分の専門外に関する技術・知見や最新の情報が得られ幅が広がり、更に、多面的な見方ができるようにもなりコンサルタント業務に役立っています。

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