田島 收 技術士(機械部門)


  • 得意とする分野は何ですか?
(1)水素・燃料電池システムの開発・設計
(2)水素及び燃料電池分野の標準化、認証基準、試験方法
(3)建設機械等の脱炭素化開発 
以上です。
 
  • 活躍したことをお聞かせください。
燃料電池システムの研究開発
 会社の新規開発として立ち上げ、開発の進展に伴い電極触媒の開発から燃料改質装置、インバータ、運転・制御ソフト、システム設計などすべての分野の開発を担当しました。このプロジェクトでは、0.3kW水素ポータブル電源から200kWコージェネシステムまで種々のシステムを開発し、試験・評価を通して幅広い知識と経験を得ることができました。
電気自動車の一充電走行距離の世界記録樹立に貢献
 国プロ1トン積小型トラック電気自動車のバッテリー開発に従事したことがあります。私が試験前夜に徹夜で充電した最高コンディションの亜鉛―空気電池を搭載して試験が行われたのですが、1970年代当時の一充電走行距離の世界記録497kmを樹立、その後、約10年間は破られることはありませんでした。入社後初めての仕事で、貴重な成功体験を得た思い出深い業務実績です。
家庭用燃料電池“エネファーム”の商品化開発
 都市ガスを燃料とした1kW級燃料電池(PEFC)システムを設計・開発し、特性・性能・安全性等の確認及び量産化検討・試作、コストダウン検討、品質保証等を行いました。新日本石油(現在のENEOS)から、2009年7月に“エネファーム”として一般販売を開始した商品です。日本で一番最初に売り出せなかったことが悔しい思い出です。
小形燃料電池(PEFC)システムのJIS規格の作成
 日本電機工業会(JEMA)のシステム分科会主査として、出力10kW未満の小形PEFCシステムのJIS規格の作成に従事したことがあります。
 JIS C 8811、8821、8822、8823、8824、8825、8826、8827、8851などを発行しました。(現在、印は、JIS C 62282-3-100に集約)
 各メーカーの合意を取り付けるのに大変苦労しました。
燃料電池発電システムの共通認証基準の作成
 認証制度の導入にあたり、複数の第三者認証機関が認証検査(形式検査)で使用する共通認証基準が作成・発行されました。WG主査として参加し、2004年12月に初版発行後、技術基準の改正等のたびに改正をおこない、最新版は第10版です。販売されている40万台を超えるエネファームは全て本認証に合格し、安全に使えるようになっています。
燃料電池の国際標準規格の作成
 エキスパートとして、国際会議IEC/TC105に参加し、各種のJIS規格をIEC国際規格に反映しました。特にJIS C 8823をベースにIEC62282-3-201が作成されました。この国際規格は、エネファームの技術です。
 これまで、「小型燃料電池の市場は世界に無い」と言われていましたが、「小型燃料電池の市場がある」ことを証明できました。   
 現在、IEC62282-3-100(安全性)、IEC62282-3-200(性能試験)、IEC62282-3-201(小形性能試験)、IEC62282-3-400(小形システム)等の見直し作業中です。
 
小形燃料電池の一般用電気工作物への規制見直しに参加
 家庭用燃料電池の販売開始において、電気事業法、消防法の見直しが必要でした。燃料電池業界を代表して、規制緩和を審議する各委員会・WGに参加しました。結果、出力10kW未満、作動圧力0.1MPa未満のPEFC及びSOFCは一般用電気工作物として認められ、エネファームの普及に貢献しています。
 これがなければ、家庭でエネファームを使うことができないところでした。
水素燃料仕様の国際標準規格の作成
 燃料電池自動車(FCEV)ミライなどに使用される水素ガス組成がISO/ TC197/WG27で規格化されています。2019年11月に統合版ISO14687が発行されました。世界の水素ステーションで販売されている水素は、ISO14687のGrade Dを、定置用はGrade E仕様を満足しています。現在改訂作業中で、WG27のコンビーナとして参加しています。各国の意見を調整しなければならなく落としどころを見つけるのが大変です。自分の意見をキチンと持って、提案することが大切だと感じています。
  • 技術士を取得して良かったことは?
 自分の技術力を説明し、理解してもらう必要がなくなりましたが、技術士としての新たな責任を感じるようになりました。
 技術士会に入会し、各分野の委員会・講演会・セミナー等に参加することで活動範囲が広がり、新しい知識を得ることができるようになりました。
 技術士資格を有していることで准教授ではなく、博士と同じ客員教授となることができました。

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